食わず嫌いはいけない [新刊備忘録]
新潮社のファンタジーノベル大賞受賞作は、結構面白い作品の宝庫だと思うのですが、それでも「信長―あるいは戴冠せるアンドロギュヌス」の場合は、タイトルを読んだだけで、「信長がアンドロギュヌスなんて有り得ない~」という脊髄反射でまったく読むのを止めてしまい、同じ著者の「聚楽―太閤の錬金窟(グロッタ)」他も手に取ることすらありませんでした。
が、しかし、最新作の「安徳天皇漂海記」は、内容紹介をチラ読みしてみると「江ノ島に隠された琥珀の球。その中に浮かぶのは非業の死を遂げた筈の安徳天皇だった。悲劇の壇ノ浦から陰謀渦巻く鎌倉、世界帝国・元、滅びゆく南宋の地へ-。日本と中国2人の帝の数奇な運命を描く歴史小説。」などとあり昔同僚と「安徳さま、お許しを!」などと海竜祭の夜ごっこを残業中にしていた者としては(既にいい大人だった・・)読まずんばならじ、というところ。
実際に読んでみると結構すらすらと読めてしまい、通勤2往復半で読みきってしまいました。史実から巧みに構築した幻想小説で、ちょっと澁澤龍彦なんかにかぶれたことがある人だと「ほほう~」などと思ってしまうかもしれません。既作はもっとクドい筋立ての作品ばかりらしいので今後手を出すかどうかは思案中ですが、それにしても、信長・秀吉後に作者が素材として使っているのは松永久秀とか源実朝とかちょっとマイナー入り過ぎのような・・・。ニッチ過ぎる。
中央公論のファンタジー・ライトノベル部門は他出版社でブレイクした人に「ちょっと趣味に走った作品」をかかせて儲けるのが上手いなと思ったなりです。
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